Swim Mom 日記

くまもと出身、アメリカ東部在住。水泳好きな息子たちのおかげで競泳ワールドを覗いています。

オリンピックはメートルでした

「日本の池江璃花子さんっていう競泳の選手が100フリーでオリンピック代表のトップになったんだって!」と、仕入れたてのニュースを、夕食の時間に家族の前で話してみました。

通常、私の関心事を息子たちに何か話しても、「へー」か、「オーケー」以外の反応をもらうことは難しいものなのですが、今回は"オリンピック" と "トップ"というキーワードに食い付いてきた様子で、「それで、タイムはなんだったの?」と聞き返してきました。


「それが、54秒台だったみたい」と言うと、長男が意外そうな表情で、


「え?54秒? あれ?僕のタイムより4秒速いだけだ」とコメント。


「そうだよね」と、私も、確かこの前のミートで長男の100フリー(自由形)も1分を切ったと聞いていたところだったので、同じ50秒台ってことは、ひょっとして世界基準は意外と近いのかしら?などと頭をかしげていました。


ですが、このまぬけな考えは、その数秒後に長男がぼそっとつぶやいた一言で消え去りました。




「オリンピックはメートルだ」


と。

私も、慌てて「あ、そうだった、オリンピックはメートルだったんだ。」と、今USA Swimmingはショートコースヤード(SCY)というシーズンで、メートルではなくヤードでのタイムを計っているんだったということを思い出し、ヤードとメートルの違いはものすごく大きい*という長男の言葉とともに、改めて池江選手の100メートル自由形のタイムがどれほど速いのかということが分かり、家族一同ズドーンと凍り付きました。
(*100ヤード=91.44 メートル)


毎年、秋冬のSCYが終わると春と夏は、LCM(ロングコースメートル)というシーズンにかわり、タイムは50メートルのプールで計られるのですが、去年のパンデミックでLCMはキャンセルとなっていたのでメートルの存在をすっかり忘れてたのでした。


そんな勘違いエピソードはさておき、
池江璃花子選手の復帰ニュースには鳥肌レベルで感動しました。


私が競泳のスイマーの姿を見てすごいなと思うのは、自分の作った結果が周りに見られ続けること、良い泳ぎもいまいちな泳ぎも、タイムが公開されて、良くも悪くも周りに評価されるリスクを取り続けることの勇気です。スイマーとして登録してミートに出る以上、タイムはアプリで丸見え。良い結果もですが、しばらくスランプが続いていることも、不調なこともすべてが本名と共に数字で容赦なく公開されます。消しゴムで消すことはできない。
一発勝負。例えばブログ日記のようにあとから見直して追記したり書き直したりなどの修正ができません。



それが、小さなチーム、ローカルの大会でもプレッシャーなのだから、いったい国の代表選手にとってはどれほどのものなのかなって思います。池江選手の数年前の病気のニュースから、いったいどんな心境を乗り越えて、今回の結果を出すまでどれだけの挑戦があったのか、私の乏しすぎる想像力ではわかりっこないのですが、変わらず自分の泳ぎと向き合ってきた日の積み重ねがあったんだなあと、垣間見させてもらった今回のニュースでした。


傍らで応援をしながら、うちの子達だけでなく他のスイマーが個人個人様々な状況を乗り越えて、自己新記録に立ち向かう姿を見させてもらえるということがとてもとても幸運だと感じる今日この頃です。